単に収益性だけを見るのではなく、中心市街地の自動車の数を減らして自動車以外の移動のバリエーションを増やすという街づくりの方針のなかにLRTを位置づけることが大切なのだ。そのためには宇都宮市のように、行政が資金面で支えることが必要だ。駅前に安い駐車場を提供して乗り換えを促す「パークアンドライド」の推進、鉄道やバスなど他の交通機関とスムーズに乗り換えができるよう「結節点機能」を強化することも大切になる。

●都心にロープウェーも

 今年9月に宇都宮さんが視察したオーストラリアのゴールドコーストでは、14年に全長13キロのLRTが開業した。

「市民の88%が自動車で移動しているという状況を変えたいという街づくりの方針がある。LRT導入後、公共交通全体の利用者が導入前から25%増えている」(宇都宮さん)

 交通コンサルティング会社ライトレールの社長、阿部等さんは、技術革新によるLRTの高速化が普及のためには必要だと言う。

「公共の空間を使う以上、LRTは社会に役立つものとすべき。安全を確保しつつ、キビキビと走らせてこそ価値がある」

 東京都豊島区の高野之夫区長は03年、池袋駅東口のLRT構想を発表した。池袋に会社のある阿部さんは早期実現に向け、地元から提言を続けている。

「鉄道の最先端技術により速度と加減速度を高め、運賃は車内ではなく停留所で受け渡して停車時間を短くする。さらに、交通信号と列車運行を同期させて赤信号での停車を最少とし、池袋と早稲田を急行は4分で結ぶ。こうすれば利用客は増え、池袋も、そこを拠点とする郊外路線沿線も活性化する」

 また、LRT以外で、工期が短くコストが抑えられる方法として、阿部さんが提案するのがロープウェーだ。東京・銀座付近から「晴海通り」上空を通し、人口が増え五輪施設も集まる臨海部とを結ぶプランを提唱する。

 実現すれば、東京から新たな都市交通の文化が発信されるかもしれない。(編集部・福井洋平)

AERA 2016年9月26日号

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