■山田進太郎さん[38]メルカリ代表取締役社長
アプリ使いで効率アップ より人間的でクリエイティブに
実はスマホをヘビーに使っているわけではないんです。アプリといえば「Facebook」「Instagram」「Twitter」、社内のビジネスチャット「Slack」などコミュニケーション系のものを見ていることが多くて、携帯で調べ物をしたり動画を見たりすることはほとんどないですね。だってパソコンの方が圧倒的に精度が高いですから。意外ですか? まぁそうですよね、アプリをつくってるのに(笑)。
仕事はじっくり考えて集中してやりたいので、基本的にパソコン派です。外出先でメールを確認することはあっても、その場で判断しないで会社や家に戻ってパソコンの前に座ってから、関連資料と照らし合わせてよく考えて返信するようにしてます。娘は10カ月でまだ小さいので、朝は一緒に遊んで、9時過ぎくらいに出社します。携帯を一度も見ないで家を出ることもありますよ。
●264個インストール
とはいえ職業柄、アプリはたくさんインストールしてますね。今は264個。面白そうなものやこれからポピュラーになるかもしれないと思ったものは全て試すんです。
僕が一番使い倒しているアプリは、メモを書き込んだら自分のメールに送ってくれる「Captio」という超シンプルなものです。外出先で思いついたアイデアやタスクはすべてこれにメモして、後でPCメールからPCのTo Doリストにコピペして管理してます。それからSNSで流れてきて気になったニュース記事をその場でじっくり読めないときにも、記事のリンクを送って、後でPCから読んでいます。
●“簡単にできる”が大切
今メルカリは国内3500万、アメリカでは2千万ダウンロードと好調です。僕はメルカリを全世界で利用できるサービスにしたい。力を入れているサンフランシスコやローンチ準備中のロンドンなど、今は月の約半分を海外で過ごしています。海外滞在中は日本にいるときとは使うアプリも変わってきますね。日本にないものでは、個人間の送金ができる「Venmo」がすごく便利です。ホームパーティーなどに活躍するいわゆる“ワリカン”ツールで、アメリカでは5年くらい前からとてもポピュラーなんです。Facebookと連動して誰が誰に送金したか見ることができるので、払い忘れている人なんかも分かりやすい。もちろん非公開にもできますよ。操作は相手先を選択して金額とコメントを入力するだけ。銀行口座やデビットカードを利用した場合は手数料もかかりません。
日本にも類似のサービスはありますが、Venmoの方が使い勝手が圧倒的にいいですね。でもこれは日本では規制上、難しい。「Uber」「Airbnb」もそうですけど、日本はちょっと制限が厳しいかなぁと思うところはありますね。他にもスタバのアプリ「Starbucks」を使えば、オーダーから決済まですべてできるので、並ぶ面倒がなくてよく使ってます。これも早く日本でできるようになると嬉しいですね。
アプリは“簡単に”何かができるということが大切だと思っています。僕と違って奥さんは家にいてもなんでも携帯を使ってやるんですが、そんな人にとってネットオークションの仕組みは複雑すぎる。メルカリは簡単に出品・購入できるという使いやすさを突き詰めてつくりました。
アプリがあることで僕自身の生活も変わりました。情報をストックすることから解放してくれたのは大きいですね。これまで脳に記憶させていたタスクやアイデアはアプリにメモしておけばよくなったので、紙に書いていた頃よりうんと生産効率が上がりました。その分、より人間的で、よりクリエイティブなことに時間を割けるようになったのは嬉しいですね。
(編集部・竹下郁子)
※AERA 2016年9月19日号