食物アレルギーといえば、子どもが発症する卵や乳製品などのアレルギーが一般的だが、大人になって突然発症するケースが増えている。しかも大人の場合、食べ物以外の予期せぬものが原因になることもわかってきた。
この食物アレルギー、子ども時代に発症するのと大人になって発症するケースではだいぶ違うという。乳幼児の場合、消化機能の発達とともにアレルギー反応が減ることが多い。一方、成人の食物アレルギーは一度発症すると治りにくく、生涯続くケースも少なくない。また、アレルギーを起こしやすい食材も違う。
乳幼児を中心とした約2500人に実施した2008年の全国調査で、原因物質は卵が40%近くを占め、牛乳、小麦が続いた。一方、相模原病院を訪れた09~11年の成人患者216人では、リンゴやモモなどの果物、野菜が最も多く約34%、2位は美容石けんの「茶のしずく石鹸」(旧製品)に含まれていた加水分解小麦で約29%だった。
もうひとつ大きな違いは、大人の食物アレルギーは、口から食べる食物自体でなく、皮膚や鼻の粘膜などから体内に入った別のアレルゲンが原因になるパターンが多いということだ。
実は原因物質1位の「果物・野菜」は、花粉症と関連が深い。
さまざまな花粉症に悩む都内在住の会社員女性(31)は、サクランボやキウイを食べると口の中がピリピリしたり、気分が悪くなったりするという。病院で検査を受けたときに、医師から「花粉症の人は果物も気をつけて」と言われるまで、「みんなも果物を食べたら同じようになると思っていた」という。
これは「花粉食物アレルギー症候群」と呼ばれ、ハンノキやシラカンバなどで花粉症になった人は、似たアレルゲンを持つバラ科のリンゴやビワ、モモなどと交差反応を起こし、アレルギー症状が出るという。医療用手袋などに使われている天然ゴムの「ラテックスアレルギー」も、バナナやキウイと交差反応を起こすことが知られている。
2位の加水分解小麦も、食べ物でなく洗顔石けんが原因で起きた。医療機関で茶のしずくによる小麦アレルギーと認められた人は、今年6月20日までに1923人にのぼる。まぶたの腫れを訴える人が多いが、小麦を口にして、呼吸困難や血圧低下などのアナフィラキシーショックを起こした人もいた。
問題になった当時の茶のしずくによる小麦アレルギーを調べている日本アレルギー学会特別委員会委員長の松永佳世子・藤田保健衛生大学教授によると、茶のしずくに入っていた加水分解小麦の「グルパール19S」という物質が原因だという。加水分解小麦は小麦のたんぱく質を塩酸などを使って細かく分解したもので、保湿性が高く、泡立ちも良くなる。毎日洗顔しているうちに、顔の皮膚、目や鼻の粘膜から体内に侵入。体がこの物質を嫌だと判断して、体内でIgE抗体を作り、加水分解小麦とたんぱく質の形がよく似た小麦にまで反応してしまうようになったという。
※AERA 2013年7月8日号