毎日5枚以上食べている人は、量を減らした方が…(※イメージ)
毎日5枚以上食べている人は、量を減らした方が…(※イメージ)
この記事の写真をすべて見る

 ハム、マーガリン、小麦粉、コーヒー……。発がん性がある? 心筋梗塞を引き起こす? 諸説乱れ飛ぶ。果たして何を信じればいいのか? 科学的知見に基づく食の新常識を知れば、情報に惑わされない。

【毎日ハム5枚は× 気にすべきは量】

「ハム・ソーセージは原則すべて『無塩せき』となりました」
 昨年10月、首都圏を基盤とする食品スーパー、オーケーの店頭にこんな文字が躍った。「無塩せき」とは、発がん性が一部で指摘される発色剤「亜硝酸ナトリウム」を使用していないハム・ソーセージのこと。

 流通しているハム・ソーセージの多くには亜硝酸ナトリウムが含まれている。加工肉メーカーはホームページなどで「肉の色を固定するほか、獣臭さを消し、ボツリヌス菌などの細菌の増殖を抑制する」と説明する。

 オーケーが「原則無塩せき」を打ち出したのは、世界保健機構(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)が「ハム・ソーセージなどの加工肉の発がん性には十分な証拠がある。毎日50グラムを食べると、大腸がんになるリスクが18%増える」と発表し、多くのスーパーで買い控えが広がった時期だ。

●世界では3万人ががん

「食の安全に敏感なお客様のニーズに応えるため、かなり前から準備していたもので、発表と重なったのは偶然。ただ、売り上げへのダメージは少なく済んだ」(オーケーの運営会社)

 この買い控え騒動について、国立がん研究センターの笹月静・社会と健康研究センター予防研究部長はこう話す。

「IARCの分類が一部で誤解されてしまった面が強い」

 IARCはさまざまな食品や生活習慣とがんのリスクとの関連について、「科学的根拠の強さ」に応じて、五つのグループに分けている。世界中の研究論文のうち、人に対する発がん性について「ある」と認めている論文が相当数あれば「発がん性の十分な証拠がある」としてグループ1に、動物実験で十分な証拠はあるが、人では「限定的な証拠」にとどまるのであればグループ2A、といった具合だ。

次のページ