東北6選挙区は、与党が東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県を落とすなど、1勝5敗の惨敗を喫した。特に注目されるのは、東京電力福島第一原発事故の影響が続く福島選挙区(改選数1)の現職閣僚の岩城光英法相が、野党統一候補で民進党の増子輝彦氏に僅差で敗れたことだ。

 ただ、地域別の得票率を見ると、複雑な内実も浮かぶ。岩城氏は沿岸部の全自治体で優勢だった。原発事故の被害を最も受けた双葉郡では内陸部も岩城氏が制し、川内村ではほぼダブルスコアで引き離した。

 世代別では、岩城氏は10~50代の全世代を制した一方、増子氏が上回ったのは60代、70代のみだった。

 こうしたデータを示した立命館大学衣笠総合研究機構准教授の開沼博氏は、

「『復興に一定のめどがついた地域』と『高齢者』が、現職大臣の落選に影響を与えたことが見えてきます」

 と指摘する。

 岩城氏は12日の閣議後の記者会見で、参院選の野党共闘について「安倍政権を打倒するという意味での野党共闘だった。福島に限って言えばそれなりの成果をあげた」と振り返った。前出の高橋氏はこう話す。

「沖縄、福島両県は、国の政策によって今、最も厳しい状況に置かれた地域です。そうした地域で現職閣僚が落選したことは、安倍政権の政治に対する根本的な批判を明示しています」

 参院選と同じ10日に投開票された鹿児島県知事選でも、脱原発を唱えた野党系候補が自民、公明両党の支援を得た現職を破り、初当選を果たした。

 アベノミクスの恩恵を実感できない農村部は、TPPへの反発も根強い。地方では従来の保守層の液状化も浮かぶ。与党批判の受け皿にとどまらない、信頼に足る対案を打ち出せる野党勢力の確立が急務だ。(編集部・渡辺豪)

AERA 2016年7月25日号

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