「ここぞ」という時に実力を発揮できる強いメンタルがほしい。
そう思う人は多いはず。大丈夫! 心も鍛えられるんです。
不安の源を知り、ルーティンを見つけ……。最後は「なんとかなるさ」が大事です。
都内に住む30代の男性会社員は、恋人からのひと言を思い出すたび心が沈む。
「メンタル、弱っ」
この春、入社以来の事務方から営業へ異動した途端、咳き込む場面が増えた。客との商談、社内のプレゼンなど、緊張が伴う場面になると咳が止まらなくなる。気管支の疾患かもと病院へ駆け込んだが異常ナシ。
「精神的なもの。慣れれば止まる」
と言われたが、一向に治まらない。それどころか、また咳き込むかもと余計緊張し、資料を持つ手は脂汗でベトベトに。
「ほんま、たまらんわ」
苦笑いで彼女に報告したら、冒頭の残酷リアクション。
「関西人なのに緊張するの? 情けなっ」
とまで言われ、余計に落ち込んだ。
「関西人が全員メンタル強いわけないっしょ? 『やっぱA型はチキンだわ』とまで言われて。血液型のせいかよ!って」
●「自分に満足」日本最低
ジョークを交えたトークは面白く、営業センスは十分ありそう。筆者と話すぶんには咳は出ない。資質というより、慣れない部署での気後れ感のほうが大きそうだ。
「営業部は20代の後輩とかもすっごい流暢に話すんですよ。オレ、ヤバくね?って。もともと自分に自信がないんです」
2014年版子ども・若者白書(内閣府)にある、日本や英米独仏など7カ国の13~29歳の若者を対象とした意識調査によると、「ゆううつを感じる」と答えた若者は最も低いドイツの36.9%に対し、最も高い日本は77.9%と倍以上多い。さらに「自分自身に満足している」人は、最高が米国86%、最低の日本は45.8%。日本の若者はどうやら「不安で、自信がない」ようだ。
「若い人たちはこんなに不安なのかと、あらためて思いました」
そう話すのは講談社の編集者、鈴木崇之さん。ラグビー日本代表のメンタルコーチとして、昨年W杯で活躍した五郎丸歩選手がキックを蹴る際の独特な動き「ルーティン」を編み出した荒木香織さんが著した『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』(講談社+α新書)を担当した。
今年2月の刊行前に書店から注文が殺到し、異例の発売前重版。わずか4カ月で5万3千部のベストセラーに。五郎丸人気が拍車をかけたにしろ、読者はがきには「勇気づけられた」「救われた」という感想が多かった。著者である荒木さんは、若者の不安についてこう話す。