「今の若い人たちは、物心ついたときから日本が不況だった。そんな空気感もあって不安で自信が持てないのかもしれません。でも、心を整えることをメンタルトレーニングというように、スキルさえあれば自分をコントロールできます」
●他人に「助けて」は強さ
荒木さんによると、人が不安になるのは、先が予測できず、不明瞭なときだ。そんなときはまず「何が不安か」を知ることが大事だという。例えば、上司や同僚に仕事を評価されたいのに、自分がどう思われているかが不安なのか、その仕事をやり遂げられるかが心配なのか、もしくは、仕事ではなく、パートナーとうまくいっていないことで心が不安定になっているのか。
「仕事が不安と言いながら、実は親との関係で苦しんでいたり、ご近所トラブルを抱えていたりすることもある。最初に不安だ、嫌だと感じることを全部書き出してください。そこから優先順位をつけて対策を練ればいいのです」(荒木さん)
加えて重要なのが、誰かに相談すること。
「日本人は他者に助けを求めるのが苦手。弱いところを見せるのは恥なんですね。でも、助けてと言えることが強さだと知ってほしい」(同)
6月のスコットランド戦で日本代表の副主将として活躍した立川理道(はるみち)選手(クボタスピアーズ)も、荒木さんからW杯でサポートを受けた。南アフリカ戦3日前。リザーブの予定だったのが、先発の可能性があると知らされ、眠れなくなった。
「うつらうつらしてきても、南ア相手にミスをして頭を抱える夢を見てはうなされた」
と、立川選手。荒木さんに相談し不安なことをノートに書き出した。「パニックになるかもしれない」「味方の声が聞こえなくなるかも」「同じミスを連発するかも」……不安要素は10個近くあった。
「その考えは、どこからくるんやろう?」
荒木さんから聞かれ「(当時のヘッドコーチの)エディーさんに怒られたらって思うとチョーキング(緊張)する」と答えた。