「犬種差がある理由はわかっていません。また、同じ常同障害でも、柴犬は尻尾を追う行動が多いのですが、ドーベルマンではわき腹をなめたりします」
こうした精神疾患の治療には、飼い主への過度の依存を断つ行動療法や、人間と同じように「三環系抗うつ薬」「SSRI」といった抗うつ剤も使う。
ペットに精神疾患が目立ち始めたのはなぜか。獣医師で、アニマル・ケアサロン「FLORA」(東京都港区)の中桐由貴院長は言う。
「最近のペットは、夏場のクーラーが利いた部屋に長時間いて体温調整ができなくなったり、住宅事情による運動不足などでストレスを感じる環境下に置かれたりしています」
同サロンは日本初となるペット向け心療内科を設け、東洋医学の考えをベースに治療を行う。東洋医学でいう、気が不足する「気虚」や気が滞る「気滞」の状態になると、精神疾患を発症しやすいという。
かわいいペットが心の病にかからないためにはどうすればいいか。中桐院長は助言する。
「飼い主はペットの気持ちを察してスキンシップを大切にしてほしい。適度な運動も必要。ただ、ペットとの距離が近すぎても依存しあう状態になり、飼い主と別れた時にはいわゆる“分離不安”になるので、つかず離れずの距離を保ってほしい」
(野村昌二)
※AERA 2016年6月20日号
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