双極性障害を専門に研究する理化学研究所脳科学総合研究センターの加藤忠史医師は「診断が難しい病気」と話す。
「本人にとって躁は絶好調な状態で、病気という自覚はない。抑うつで困っているときしか受診してこないので、うつ病と診断されるケースが非常に多い。正しく診断するには、以前に躁状態があったかどうかを確認するしかない。正しい診断に行き着くまでに、平均8年かかると報告されています」
双極性障害は、薬の選択がうつ病とは異なる。病状の変化や副作用に合わせ、薬の種類や量を細かく調整する必要がある。
「早い段階から適切な治療をすれば、症状をコントロールしながら普通の生活を送ることができる。ところがすったもんだしているうちに大切なものを失ってしまいます。自殺の危険も高くなる」(加藤医師)
再発率が高い病気で、5年間で9割近くが再発するという報告も。本人が病気を理解し、症状が治まったあとも薬を飲み続け、生活リズムを整えるなど、継続的な治療が欠かせない。
「行きすぎた言動で社会的信用を失うことも多い。こういう病気があることを多くの人に知ってもらうことが大事です」(同)
(ライター・熊谷わこ)
※AERA 2016年6月20日号