うつ治療に正誤の絶対的基準はない。診察は医師の主観に影響される部分もあり、正しい診断に行き着くまで数年かかることも。診断誤差や再発を減らす最新治療とは。
【双極性障害】治まった後も継続的治療が必要
抑うつ状態になる病気には、躁(そう)と抑うつを繰り返す「双極性障害(躁うつ病)」もある。神奈川県在住の主婦、坂口夏子さん(仮名・44歳)は、15年前からこの病気と付き合ってきた。
躁の時は気分が高揚し、創作意欲がわいて工芸などに夢中になる。しかし夜中に友だちに電話をかけまくり、疎遠にされたことも。買い物で1カ月100万円を使ったこともあった。
一方、抑うつ状態になると朝起きられず、着替えや入浴もできなくなる。坂口さんは言う。
「最もつらいのは抑うつ状態よりも躁状態のあと。浅はかなことをしたと後悔して落ち込む」
双極性障害は、100人に1人が発症する身近な病気だ。普通の生活が送れないほど躁状態が重いI型と、軽めのII型がある。坂口さんはII型だ。抑うつの時は、一般的なうつ病とほぼ同じだが、軽躁になると、次々にアイデアを思いつくなどいい面もあるが、偉くなったような気になって説教を始めるなど周囲に迷惑をかけてしまうことも少なくない。気が大きくなって借金をし生活が破綻する人や離婚する人もいる。