はたして、これは「欠陥マンション」なのか。記者は、熊本大学大学院自然科学研究科の松田泰治教授(地震工学)と一緒に、被災した各地の建物を見て回った。松田教授は言う。
「耐震上は問題ないと考えます。ジョイントは『非構造部材』なので、建物の主構造の耐震性には影響を与えないと思います。ドア付近の壁などに亀裂は認められますが、強度に関わる柱や壁部分には、致命的な損傷は出ていないように見えます」
松田教授によると、耐震基準とは、建物が無傷の状態で保たれることを保証するものではなく、最低限、命を守る空間を確保することを担保するものだという。部屋もつぶれておらず、構造を支える柱や壁に大きな損傷がない状態なので、建築基準法上も問題ないと見る。
とはいえ、西棟は玄関ドア付近の壁にも大きな亀裂が入り、南棟よりも明らかに被害が大きい。西棟の7階に住む女性(61)はこう嘆く。
「部屋の壁にも亀裂が入って、ベランダの壁も落ちました。玄関も部屋の中のドアも私の力では開かないので、夫がいないと出入りできない。ドアが開かないから、片付けもできません」
西棟は揺れの方向と建物の向きの関係で被害が大きくなったと推測されるが、近隣で同じ向きに立つ同規模のマンションは無傷だ。
「建物にはそれぞれ苦手な揺れの周期がある。地震の揺れが建物が揺れやすい周期に当たると共振して、損傷が大きくなってしまう」(松田教授)
(アエラ編集部)
※AERA 2016年5月2日-9日合併号より抜粋