建築基準法の耐震基準が強化された1981年以降の建物は、震度7の地震にも耐えられるとされている。だが、熊本市ではマンションの渡り廊下が崩落し、益城町では真新しい戸建ても倒壊した。一体なぜか。地震工学の専門家と現地を回り、原因を探った。
外から見ると、マンションは真っ二つに“割れて”いた。
熊本駅からほど近い中央区世安町の物件は、築17年、89戸のファミリータイプ。13階建てで、南向きと西向きの棟が渡り廊下でつながる構造になっている。
今回の地震で、その渡り廊下は完全に崩落。ジョイント部分の金属が外れ、割れたコンクリートからは中の鉄筋が飛び出していた。
「最初は、欠陥マンションだったんだなと思いました」
こう語るのは、同マンションの2階に住む男性Aさん(43)。崩落に気づいたのは、最初の地震があった翌日、4月15日の朝だった。近隣に避難していたAさん一家がマンションに戻ると、渡り廊下が無残な姿になっているのが見えた。
「上の階に行くほど、亀裂が大きい。他の住民の方とも『心配だ』と話していました」
ただ、2階のAさんの室内は損傷が軽く、その日はマンションに帰ることに決めた。夕方には設計、施工も担当したディベロッパーの担当者2人が説明に来た。ここでは「エキスパンションジョイント」が用いられており、大地震ではジョイント部分が壊れることで、お互いの棟に衝撃が伝わらない構造になっていること、建物が倒壊する恐れはないことなどを聞いた。Aさんもひとまず安心したという。だが、翌日未明にM7.3の本震が起きた。
「14日の数倍はある横揺れがいきなり襲ってきた。一番下の息子がまだ小学2年生なので、ケガをしないように必死に覆いかぶさりました」(Aさん)
すぐに外に出ると、渡り廊下の損傷はよりひどくなっており、廊下は大きく開き、上下がズレてしまっていた。建物の壁のタイルもはがれ落ちていた。
「資産価値は相当落ちたでしょうね。でも、会社も近いし、子どもたちの学校もあるので、元通りになるなら住み続けたいのですが……」(同)