採用方法もユニークだ。応募者には「自分を表現するキーワード」を101個、書いてもらう。好きな食べもの、キライな虫……なんでもOK。面接もキーワードを見ながら、相手の人間性を掘り下げる。

 ある女性が提出したシートには「ステゴサウルス」とあった。清楚な雰囲気で、物腰も柔らかい。なのに「恐竜が大好き」と。がぜん興味を持ち、「一緒に仕事がしたい」と思った。採用が決まった。

 そんな片桐さんの会社に「サークルのよう」と眉をひそめる先輩経営者もいるかもしれない。

 哲学その3、収益性。

「仲間を巻き込む以上、キッチリ黒字は出す。売れないバンドマンのように、苦しい船にメンバーは乗せない」

 どんな会社も、利益を出すことは共通目標だ。その手段として、多くの経営者は「どんな事業をしようか」「どう効率化を図ろうか」と考える。結果、社員がその歯車になることもあるが、片桐さんは違う。

「一緒に働きたい人を探し、チームで仕事をする。それが結果として利益を生むと思う」

 事業の内容より、それを生むための人や組織を固めるタイプだ。守りも鉄壁で、管理担当は「キャッシュアウトは悪」が口ぐせ。給料以外の支出をとことんケチる。

 いい人といい仕事をすれば、たとえ会社が解散しても、「あのとき楽しかった」と言い合える。「仕事は思い出」と考えるゆえんだ。

AERA  2016年4月11日号より抜粋

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