相模鉄道 運転士小田桐昌彰さん(36)趣味は登山。「山で突然雲ができるのはなぜ?」と疑問に思ったことがきっかけで天気に興味を持つようになった(撮影/写真部・長谷川唯)
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相模鉄道 運転士
小田桐昌彰さん(36)
趣味は登山。「山で突然雲ができるのはなぜ?」と疑問に思ったことがきっかけで天気に興味を持つようになった(撮影/写真部・長谷川唯)

 気象予報士といえば気象キャスターをイメージする人が多いが、職業は多岐に及ぶ。暖冬に豪雨、竜巻など、極端な気象現象も珍しくない昨今。気象の知識がさまざまな場面で役に立つ。人気資格はどう生かされるのか。

 航空や鉄道などの運輸業界に気象予報士資格を持つ人は多い。

「大雨は、線路の冠水や土砂災害などを引き起こし、列車の運行を妨げる場合があります。また、一定以上の雪が積もれば、ブレーキが利きにくくなります。安全運転を行うには天気の知識は欠かせません」

 そう語るのは、相模鉄道で電車の運転士をしている小田桐昌彰さん(36)。

 小田桐さんは18歳で相模鉄道に入社し、21歳で憧れだった運転士の資格を取得した。その後、社内の教育訓練制度の通信講座の案内を見て、気象予報士を目指すことにした。社内の昇進試験と重なり、途中2年ほど勉強を中断したものの、29歳のときに合格。8回目の挑戦だった。

 気象予報士の資格を取ってからは、上司や同僚から天気について聞かれることが増えた。

「専門的な気象の知識を伝えれば、運転業務を行うにあたっての注意喚起ができますし、周囲とのコミュニケーションのきっかけにもなります」

 現在、小田桐さんは運転士の本業の傍ら、休日に神奈川県の防災出前講座で講師も務め、気象災害への対策などについて語っている。「気象を通じて皆をハッピーに!」というのが、小田桐さんの活動モットーだ。(ライター・今井明子)

AERA 2016年3月28日号より抜粋