人々が食品リサイクルに注目するきっかけにもなった、冷凍カツの横流し事件。防ぐにはどういう手だてがあったのか。専門家らに話を聞いた。
おにぎり、野菜、パン、餃子の皮、サンドイッチ……。様々な食品工場やレストランから専用容器に入れて保冷車で回収した「原料」が、大型の漏斗(ろうと)のような鉄製容器に威勢よく放り込まれていく。ベルトコンベヤーで金属片などの異物を丁寧に除去した後、破砕から殺菌、発酵の過程を経て出来上がった液体発酵飼料は、養豚農家へ運ばれる。オレイン酸を豊富に含んだこの飼料を食べた豚は、軟らかい肉質のブランド豚として、家庭やレストランで調理され、我々の胃袋に収まる。
神奈川県相模原市にある「日本フードエコロジーセンター(J.FEC)」。従業員30人足らずの同社は、食品リサイクルの先進的企業だ。カレーチェーン「CoCo(ココ)壱番屋」の廃棄カツを横流ししたとして登録を取り消された「ダイコー」(愛知県稲沢市)と同じ、食品リサイクル法の「登録再生利用事業者」に当たる。
「まったく想定外の事件でしたね。でも間口が広くて根深い食品ロスやリサイクルの問題を、一般の人々が考える契機になればとも思います」
J.FECの高橋巧一社長(49)はそう語る。
01年施行の食品リサイクル法の正式名称は「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」。食品関連事業者に対し、売れ残りや製造過程で発生する大量の食品廃棄物を抑制して減量化を推進し、それでもなお発生する食品廃棄物は、飼料や肥料、燃料に再利用していこう、という法律だ。年間100トン以上排出する事業者には報告義務があり、罰則規定もある。
この法律で再生処理を担うのが登録再生利用事業者。初年度には20社に満たなかったが順次増え、05年度に100社を突破し、今年3月10日時点で179社に達した。食べられようが食べられまいが、「廃棄」に回った食品は「食品循環資源」という名の原料になり、飼料、肥料、油脂、エネルギー用のメタン、還元剤の炭などに化ける。J.FECは飼料化専門の事業者であり、ダイコーは飼料化、肥料化の2事業を登録していた。