排出事業者は廃棄物の種類、数量、運搬業者名、処分業者名、最終処分の場所などを書き込んだ「マニフェスト」を添付して再生利用事業者に委託し、再生利用事業者は作業後に日付や処理量などを「産廃管理票」に記載することが定められている。
ここで、ダイコーが起こした事件を整理してみよう。壱番屋によれば昨年9月2日、愛知県一宮市の自社工場でパン粉を混ぜる機械のプラスチック製の棒が8ミリ欠損しているのが見つかったため、同日にここで作った冷凍ビーフカツ4万609枚(約5.6トン)全ての廃棄を決め、10月19日、ダイコーに引き渡した。ダイコーは産廃管理票に全てを同
24日付で堆肥化したと報告。しかし実際はほとんどを岐阜県の製麺業者「みのりフーズ」に横流しして、80万円の収入を得ていた。
そのカツが愛知県内のスーパー店頭で売られているのを今年1月、壱番屋のパート従業員が発見。それを端緒に、この2社により、壱番屋のカツ類をはじめ、味噌や豚バラかば焼きなど他の食品メーカーから処分を委託された廃棄物も、次々に転売されていたことが判明した。
肥料になるはずがスーパーの店頭に並んだカツ。果たしてこれは、食べては危険なゴミだったのだろうか。通常、リサイクルに回る食品廃棄物は、賞味期限切れか期限が近づいた食品だが、今回は賞味期限が製造日から約半年後の今年1月30日と、まだ期間が残っていた。食品リサイクル問題に詳しい牛久保明邦・東京農業大学名誉教授はこう話す。
「マニフェストを発行しているにもかかわらず転売を許してしまったのは、1パック5枚入りの現物で渡していたから。袋を破るとか原形をなくすぐらいにして委託すれば防げたが、再生利用事業者が廃棄物を食品として横流しすることは想定していなかった。処理能力を超えたから不法投棄する、というケースは心配していましたが」
ただ、賞味期限がまだ先だから食べても安全かと言えば、そうとも言えない。プラスチック片の混入が全く心配ないとわかってもだ。消費者団体「フードコミュニケーションコンパス」代表で、科学ジャーナリストの松永和紀さんは言う。
「企業として『捨てる』と決め、食品として管理をやめた時点で、安全ではなくなる。実際、今回のカツはいったん解凍されていますよね。全く問題のない食品であっても廃棄に回って食品としての保管ルートを外れたものについては、排出側にも『食品に戻らない』ように適切に管理する義務があるのです」
(アエラ編集部)
※AERA 2016年3月28日号より抜粋