ウガンダは80年代以降は経済成長が続いているものの、2014年の1人当たりの国民総所得はわずか670米ドル(約8万円)。世界銀行から、世界の貧しい国39カ国の一つに認定されている(14年)。

 そんな最貧国の政府にとって、マウンテンゴリラトレッキングは貴重な収入源。一人600ドルで、生息地を案内してくれる。

 周辺に住む人々もまた、貧しい。牧歌的な景色の広がる丘の上で、太鼓のビートに合わせてダンスが始まった。動物の皮で作られた伝統的な衣服を着て、やりの代わりに棒を持って踊っている男性もいる。小柄な彼らは、バトゥワと呼ばれるピグミー。狩猟と採集を生業とする民族グループの人々で、この地域の原住民だ。

 ムガヒンガ地域は91年に国立公園に指定された。その北にあり、世界遺産にもなったブウィンディ原生国立公園と同時だった。自然保護地区の設立のために、バトゥワは立ち退きを強いられた。

 先祖から受け継がれてきた自然公園内の土地の所有権は政府に認められず、賠償金もゼロ。長きにわたって、ゴリラや自然と共存してきたバトゥワの人々は、一夜で物乞いと安賃金労働を強いられる「自然保護による難民」になった。

 人口が爆発的に増加しているウガンダで、自然公園以外の土地の大半はすでに耕作されている。残っているのは険しく、農耕に適さない丘陵地ばかりだ。バトゥワの人々は今、チャリティーによって彼らのために購入された土地で踊り、生計を立てようとしている。

AERA 2016年2月8日号より抜粋

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