ツアー客と遭遇した野生のマウンテンゴリラの親子。ゴリラは毎日移動しているので、どれくらい歩けば出会えるのかは運次第だ(撮影/大瀬二郎)
ツアー客と遭遇した野生のマウンテンゴリラの親子。ゴリラは毎日移動しているので、どれくらい歩けば出会えるのかは運次第だ(撮影/大瀬二郎)

 動物園で柵越しにしか見ることがないゴリラを間近で見られるツアーが、アフリカで人気という。参加すると、確かに貴重な体験だったが、自然保護のあり方も考えさせられる旅になった。

 ベースキャンプを歩いて出発して約2時間、低木の森が突然、竹やぶに変わると、機関銃をぶら下げたパークレンジャーが立ち止まって前方を指さした。目をこらして見てみると、竹やぶに銀色の影が動く。大人のゴリラのオスの背中だ。

 しばらくすると、好奇心満々で恐れを知らないぬいぐるみのような赤ん坊が、レンジャーの一人にじゃれついてくる。心配しているのだろう。オスより一回り小さいメスがやってきて、やんちゃな我が子をおんぶして引き下がる。まるで人間のしぐさを見ているようで、ハードなハイクの疲れは知らない間に消えていた。

 ここは、東アフリカの内陸国、ウガンダの南西部に位置するムガヒンガ・ゴリラ国立公園。三つの火山と数々の湖に囲まれた、空想の世界のようなところだ。赤道に近いが標高が高いため、常に肌寒い。標高2千メートル以上の火山の中腹に、野生のマウンテンゴリラがグループで生息している。

 このマウンテンゴリラは現在、880頭が残っていると推定されている。ルワンダ虐殺、コンゴやウガンダでの内戦などの数々の人間の紛争にさらされただけでなく、森林伐採や鉱物採掘による生息地の破壊、乱獲と密猟、感染病なども原因になって激減した。オスの性成熟は12~15歳、メスは10歳ほど。出産も4年に1頭と、繁殖力は強くない。

 ウガンダがマウンテンゴリラのツアーを始めたのは、主に外貨獲得のためだ。

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