「軽減税率は高額所得者ほど恩恵を得る制度」と指摘する学者は少なくない。所得の多い人ほど、消費する額も多いからだ。同じ額を投ずるなら、低所得者にまるまる届く制度の方が効果的だ。総合合算制度を潰して軽減税率に注ぐことが低所得者にやさしい政治だろうか。
「白紙に戻したのは創価学会ということになっているが、官邸が裏からサインを出したのではないか」
そんな臆測さえ流れている。
「安倍さんは、消費増税を抱えて選挙に臨みたくない。17年4月を延期する理屈がほしい。そこで考えたのが“準備が整っていない”を口実にすることです」
政界に詳しい官僚OBは言う。
では、安倍官邸が消費増税より優先したいと考えるテーマは何か。「改憲」で大方の見方は一致する。そのためには、来夏の参院選で与党が3分の2の議席に達することが近道だ。
成功経験もある。安倍首相が14年末の衆院選で、消費税率再引き上げの延期を国民に問うとして大勝した。参院選でも同じ手を使うのではないか、という観測がもっぱらだ。その口実が「軽減税率の準備が整っていない」になる公算は大きい。
※AERA 2015年12月28日―2016年1月4日合併号より抜粋
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