2001年の9.11米同時多発テロで始まった今世紀は、14年後のパリ同時多発テロによって、新たな段階に入った。犯行声明を出したISは今や世界的な脅威と見られている。いまやアルカイダと対抗する存在にまでなった、ISが生まれた背景を改めて振り返る。
過激派に走る若者たちについて考えるとき、11年にアラブ世界を席巻した「アラブの春」に目を向けねばならない。ISが得意とするフェイスブックやユーチューブなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を、初めて政治的なツールとして使った若者たちだ。
彼らは「自由と公正」を求めて強権体制に対して立ち上がった。国民の人口が半分に分かれる「年齢中央値」はアラブ諸国では20代。シリアが20.8歳、エジプトが24.7歳、リビアが27.5歳、サウジアラビアが28.3歳……など、実に若い社会だ。その若者たちは、20%を超える失業率と、権力とのコネがなければまともな就職ができない腐敗した格差社会に、不満を強めていた。
欧米や日本は当初は革命に喝采を送ったが、チュニジアやエジプトの選挙でイスラム政党が勝利し、革命がイスラム色を帯びてくると、戸惑いが広がる。エジプトではイスラム穏健派「ムスリム同胞団」幹部のムルシ大統領が当選。社会主義も民族主義も過去のものとなり、イスラムが「自由と公正」を実現する思想となっていった。