家族のつながり重視か、プライバシー重視か──。間取りを巡っては悩みも多い。
1級建築士で『住まいの思考図鑑』などの著書もある間取り博士の佐川旭さんは、「家族いつも一緒が窮屈というのは、むしろ自然」と、前置きしたうえで、コミュニケーションが生まれるLDKは、家族関係にも非常にいい影響があるという。夫婦間に不満があっても、個室にこもり相手の存在すら感じない状態が続くと、修復不可能な関係になりかねない。嫌でも顔を合わせる間取りのほうが、亀裂が決定的になりにくいのだという。
「求心性のあるリビングが理想。夫がベランダから収穫した野菜を、リビングを通って妻のいるキッチンに運ぶ。こうした動作には言葉が伴いやすい。会話が重なるリビングでは“だんらん”が生まれ、家族をつくります。とはいえプライベートな逃げ場は必要ですよね」(佐川さん)
そこで距離感に疲弊している夫婦に佐川さんが勧める解決方法は、リビングの一部に個人のコーナーを作ること。プチ書斎などとしてパーテーションやブラインドなどで隔てることで、心に余裕ができるという。またダイニングの椅子を自分用のお気に入りに変えて、場所を固定するだけでも、パーソナルな空間が生まれ落ち着ける。これならすぐに実行できそうだ。
※AERA 2015年11月30日号より抜粋