逃げ場となるリビングの和室は、高さを変えることで空間に変化が実現する(写真:佐川旭建築研究所提供)
逃げ場となるリビングの和室は、高さを変えることで空間に変化が実現する(写真:佐川旭建築研究所提供)
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 いまトレンドは、開放感たっぷりの間取り。見た目のオシャレ感に加え、家族の一体感を高めるはずだが、必ずしもそうとばかりは言えない。プライバシーなしで、精神的なストレスがアップすることにもなりかねないのだ。

「ずっと一緒。振り向けば奴がいる。そんな間取り」

 そう嘆くIT関連会社で働く女性(35)は、広々として素敵だからと選んだ仕切りのないLDKがあるマンションに住む。

 小1の長女と4歳の長男がいる。夫とは、社内結婚で職場でも一緒。お互い管理職で、部下の数は女性のほうが数人多いくらいだ。それほど同等に仕事をしているのに、家事と育児は女性のほうが数倍、いや数十倍負担している。

「私だけが必死で朝の仕度をする台所から、夫が開く新聞の音が聞こえただけで“死ねばいいのに”と、呟いてしまうこともあります」

 開放感満載な間取りだけに、夫の行動がつぶさに目に入ってイラつき度もアップするのだ。家の面積の多くを、広いLDKに取られてしまう分、個室は二つだけ。一つは子どもと女性の寝室、もう一つが夫の寝室。数年前から、夫とは一緒に寝ていない。

 デスクを置くスペースはなし。そのためリビングのテーブルが、子どものデスクにもなる。「賢い子はリビングで勉強する」というテーマの子育て本も読んだが、正直、リビングには惨状が広がる。食卓がほぼ毎日、ランドセルやノートで散らかり放題。仕事で疲れて帰宅して、これを見るだけで、ストレスが急上昇するのだ。

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