カナダでの練習では、疲れても仲間と励まし合って笑顔に(撮影/野口美恵)
カナダでの練習では、疲れても仲間と励まし合って笑顔に(撮影/野口美恵)
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練習中に何度もコーチのブライアン・オーサーと話し合う羽生結弦(撮影/野口美恵)
練習中に何度もコーチのブライアン・オーサーと話し合う羽生結弦(撮影/野口美恵)

 夏でも夜は気温が10度を切ることがあるカナダ東部の街・トロント。身を置くだけで気も引き締まり、練習に専念できる環境がある。今夏、そこには、練習中に何度もコーチのブライアン・オーサーと話し合う羽生結弦(ゆづる)の姿があった。

 以前は、自分だけに集中してジャンプを跳び、身体に覚え込ませていた。成功してもオーサーに目配せするのみ。ミスがあったときにだけ、アドバイスを受けるスタイルだった。しかし、今年は違うとオーサーは言う。

「結弦は去年、健康面で苦労したし20歳になった。自分の意見がまとまって、練習中に細かく伝えてくれるようになりました」

 4回転トウループを1本跳ぶとオーサーの元に行き、フォームについて意見を言い合う。話し込む2人にスケーティングコーチのトレーシー・ウィルソンが加わり、今度は助走の話をする。そのうえで、スピン、ステップから続けて4回転を跳んでみる。すると今度はミス。再び3人で熟考を重ねる。とにかく、頭を使って練習しているのだ。

「昨季も本当はカナダに帰って練習したかったんです。でもケガや手術で帰れなかった。コーチもいないし、滑り込みもできない状況で、自分が何をするべきか深く考えるようにしていました。だから1年前よりは自分の意見を言えるようになったのかもしれません」(羽生)

 単独の4回転は習得済み。試合という環境でいかに成功させるかが課題だからこそ、あらゆるケースについて話し合いながら練習するスタイルが定着したのだ。オーサーの分析はこうだ。

「普段、選手とコーチは毎日会えるので、言葉にしないことも多い。でも、昨季の結弦は日本にいたので、メールで、言葉で伝えないとお互いのことが分からなかった。会えない分、結果的に、結弦の求めるスケートの練習を共有できたと思います」

 2人が決めた今季の挑戦は、“プログラムの後半に4回転トウループを入れる”こと。得意の4回転をより難しくして、基礎点を積み増す。だが、現役の日本男子が国際スケート連盟の公式戦で“4回転を後半に”成功させた例は、まだない。

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