ジャーナリスト治部れんげさんじぶ・れんげ/1974年生まれ。一橋大学卒業後、日経BP社に入社。著書に『稼ぐ妻・育てる夫 夫婦の戦略的役割交換』。13年に同社を退社(写真:本人提供)
ジャーナリスト
治部れんげさん
じぶ・れんげ/1974年生まれ。一橋大学卒業後、日経BP社に入社。著書に『稼ぐ妻・育てる夫 夫婦の戦略的役割交換』。13年に同社を退社(写真:本人提供)
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 子育て施策が薄弱だから夫婦が協力し合うアメリカ。国の制度と妻だけで子育てし、夫は戦力外の日本。比較すると、大きな違いが見えてくる。ジャーナリスト・治部れんげさんに聞いた。

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 共働きで夫婦の収入が同程度という家庭を日米で比べると、日本の男性は圧倒的に家事をしていません。妻の収入で生活水準を維持していても、夫が子どもを保育園に迎えに行くことはめったにないのが現状ではないでしょうか。育休中は妻がすべての家事をするのが当然と考える人も多い。そうすると妻の専業主婦状態が復帰後も続きがちで、妻はモヤモヤが募ってしまう。

 米国でも、家事分担に複雑な感情はあります。2000年の調査では、男性の家計負担が0%でも、家事の分担は37%にとどまった。つまり、女性の一人稼ぎ家庭でも男性は家事を4割弱しかやらないのです。これは「男性は外で働き、女性が家庭を守る」という性別役割分担の意識から、男性のアイデンティティーがゆらぎ、家事をボイコットしていると考えられます。

 06年から約1年間、米国に留学しました。専門職か管理職として働き、1人以上の子どもを持つ米国人女性とその夫たち50人以上にインタビューをしたところ、夫たちの中には家事の半分を担うことを「責任」と話す人もいました。家のことは好き嫌いや得意不得意ではないのです。

 このような進歩的な考え方が米国で広がったのは、経済的な理由からでした。1980年代に製造業が不況に陥り、特にブルーカラーの給与が減少。夫婦は共働きを迫られました。女性の高学歴化も後押しし、女性の社会進出と男性の家庭参加が同時に進んだのです。日本でもリーマン・ショック以降、都市部を中心に共働きが増え、家庭内で同じような変化が起きる兆しがあります。ただ、両国にはいくつかの大きな違いがあります。

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