「家計の動きが分かると出費に意識が向き、考えてモノを購入するようになります。また出費が急増したとき、管理する側だけじゃなく、負担も2人でシェアできて、絆も強くなる。とにかく毎月の収支だけでもお互いが認識できる工夫を。お金もたまります」
実際、2人でお金に向き合っている夫婦の場合、目標もあり貯蓄額も高いようだ。
「銀行員の夫の財布には、常に千円程度しか入っていませんよ。あ、外出時には3千円必要だって言うので、渡していますが」 と笑うのは、元銀行員で専業主婦の女性(35)。夫の給与の振込口座をしっかりキープして、明細が出るカード以外、現金は必要な分だけを渡している。
実は女性の家庭では、家計の管理者を何年かおきに交代している。そのため夫もだいたいのお金の流れは把握していて、特に不満は出ない。
「管理している側のほうが、確実に無駄遣いが減りますね。でもその分、本当に欲しいものが買えたりもしています」(元銀行員の女性)
会社役員の清水優(ゆたか)さん(37)は、さいたま市内の駅から歩いて3分ほどの場所に念願のマイホームを建てた。趣味のバイクと車が2台は止められる広い車庫。間接照明に彩られた、白亜のモダンな豪邸に、妊娠中の妻の多和子さん(36)、小学生の長女、幼稚園児の長男と、引っ越しを終えたばかりだ。
「ずっと僕が家計を管理。妻は自由に口座から現金を引き出せましたが、入出金で僕に通知メールがくるんです。給料日から3日連続で、それが6万円や9万円だったりすると、何に使っているのかな?って気になっていました。いちいち聞くのも信用してないみたいで……」
●アプリで“家計円満”に
そこで優さんは、オンライン家計簿のZaimというアプリを使用して、スマートフォンで妻が支出の内容を記録できるようにしてみた。
すると、それまで家計管理にノータッチだった多和子さんも「『幼稚園月謝』と打って堂々と引き出せる」と積極的に利用。さらに口座の残高や収支を自然に確認するようになった。
「この家計簿、すごく便利だって薦めているんですが、みんな、夫婦でお金をオープンにするのをなぜか嫌がる(笑)。でも家庭も企業と一緒。支出の中身をしっかり見て分析し、お互いが考え協力することで、目標が達成できます」(優さん)
Zaimのデータによると、2011年のサービス開始からアプリのダウンロード数は右肩上がり。これはスマートフォン利用者の増加傾向と重なる。レシートの自動読み取りや金融機関との連携などの機能が、時代のニーズに合っているのだ。
前出のFP、細田さんも「家計簿アプリは、客観的な視点が持てる利点がある」と話す。
「すべてスマホの家計簿アプリが告げていることになる」
そう話すのはIT企業勤務の女性(33)。以前は夫婦2人の外食費が予算をオーバーし、家計を管理していた女性が外食を渋ると、夫は納得できず、お互いに嫌な思いをしたことがあった。ところが2人で日々、前出のアプリで家計がのぞけるようになったことで、「外食しすぎ」と妻ではなくアプリが夫婦に伝える印象に。結果、夫のほうから「今月の外食は控えよう」という流れになり、角が立たず、出費も抑えられた。
お金で相手を制する、制されるという関係から、夫婦で一歩踏み込んでみる。そうすれば、愛も利益もふくらむのかもしれない。
※AERA 2015年10月19日号