どうすれば部下は動くのか。悩める上司に、必見の部下操縦術を教えます。
34年連続黒字の金属部品メーカー「太陽パーツ」(大阪府堺市)の城岡陽志社長は、損失を出した社員らを年に2回、「大失敗賞」(金2万円)として表彰する制度を設けた。実は自らも設備投資で失敗して受賞した一人だ。城岡社長は言う。
「第1回の大失敗賞受賞者は今やナンバー2の役員。僕もチャレンジ好きで社員時代に何度も失敗した。ところが、評価は何もしない同僚のほうが高かった。そんなアホなと。どこのトップも入社式で『挑戦せよ』『失敗を恐れるな』と言うけど、実態は違う。だから、僕は挑戦する人を評価しようと考えた」
成果を出すための秘訣については、元陸上選手の為末大氏と医学博士の石川善樹氏による研究も参考になる。
昨春から国内の五輪出場経験者10人以上にアンケート。いずれの選手も、その日の練習などでうまく「目先の目標」を立てていた。その練習も毎日、必死に取り組むわけではない。その日の精神状態や体調にあわせて取り組む分量を調整し、より大きな成果につなげていた。
石川氏は、心理学や経営学を踏まえた分析もしている。目標は社員がどの業務でやりがいを感じるかを踏まえて設定することが重要という。人には仕事において「獲得タイプ」と「損失回避タイプ」があり、前者は達成できる確率が半分の目標でも挑み、後者は確率がゼロか100%の目標を好む。また、無意識に繰り返す思考や行動は、「強み」になるのでうまく活用したほうがいいという。
成果を上げるには、動機も大切。肉体労働ならば給料(外発的動機)、知識労働であればやりがいや楽しさ(内発的動機)が人を突き動かす。だが、両方を一度に求めるとモチベーションが下がるため、取り組む仕事によって動機を変えるといいそうだ。石川氏は言う。
「社員の特徴を把握しないまま仕事をさせるのは、その人のプレースタイルを知らないままフィールドに送り出し、チームプレーを求めるようなもの。きちんとポイントをおさえた人材活用をすれば、目指す成果がぐっと近づくと思います」
※AERA 2015年10月5日号より抜粋