国税当局が、ついにビール類の酒税率一本化に動き始めた。これを受けて、業界関係者からは「第4のビール」についてもささやかれるようになった。
ビール類の税率は、原料のうち麦芽を使った比率で「ビール」「発泡酒」「第3のビール」の順で低くなる。ところが、今年度の与党税制改正大綱はビール類の税率を一本化する方向で「速やかに結論を得る」と明記。税率が一本化されれば、現ビールは引き下げ、ほかは引き上げになる方向だ。
こうした動きは、消費者の動向にどのような影響を与えるのだろうか。
厚生労働省によると、2013年の民間給与の平均は94年から135万3千円減少し、528万9千円。所得層を四つに分けて04年と13年を比べると、最も低い年収300万円未満の「下位層」が4.2ポイントとめだって増加。600万円未満の「中下位層」を加えると全体の7割弱に達する。発泡酒や第3のビールを飲みそうな層が厚みを増しているのだ。マーケティング戦略を専門とする博報堂コンサルティングの池田想さんは言う。
「家や自動車と違って、低所得者も日用品はちょっといいものを買う傾向があるとはいえ、強いビール派以外は税率一本化を機にビール類から離脱しかねない」
池田さんは、第3のビールなどの存在で辛うじて踏みとどまっていた層が減り、ビール類市場が一層縮小する可能性があると指摘。今後はチューハイなど、ビール以外の税率の低いアルコール飲料に注力する動きが強まるのでは、と予想する。
それでは、ビールメーカーは苦しくなるばかりだ。取材を進めると、業界関係者がこんな大胆予想をしてみせた。
「別の低アルコール飲料なのにビールテイスト、という商品が開発されるかも」
事情通はもっと簡単な方法も披露してくれた。
「ノンアルコールビールを買って、大五郎やビッグマンといった安い甲類焼酎などと混ぜて、自宅で新ビールを作り出すんじゃないの」
そんな「第4のビール」時代が到来するのかもしれない。
※AERA 2015年9月21日号より抜粋