メカニックデザイナー大河原邦男さんおおかわら・くにお/1947年、東京都生まれ。72年「科学忍者隊ガッチャマン」でメカデザインを担当。以降、メカニックデザイナーとして活躍。8月8日~9月27日、上野の森美術館(東京・上野)で「メカニックデザイナー 大河原邦男展」を開催(撮影/編集部・野村昌二)
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メカニックデザイナー
大河原邦男
さん
おおかわら・くにお/1947年、東京都生まれ。72年「科学忍者隊ガッチャマン」でメカデザインを担当。以降、メカニックデザイナーとして活躍。8月8日~9月27日、上野の森美術館(東京・上野)で「メカニックデザイナー 大河原邦男展」を開催(撮影/編集部・野村昌二)
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 初放映から36年経つにもかかわらず、いまだにファンを魅了し続ける、アニメ「機動戦士ガンダム」。その魅力のひとつは、ガンダムやザクなどの「メカ」の存在だ。メカニックデザイナーの大河原邦男さんに、どんな思いでデザインを手がけたのか聞いた。

* * *
 メカはキャラクターでもある、というのが、私の持論。つまり単なるロボットではなく、メカは人格を持った存在なのです。

 ガンダムが放映された時、私は31歳。今まで数えきれないほどのメカを描いてきましたが、どんな作品でも敵キャラへの思い入れが強くあります。ガンダムもそう。

 正義の味方は「玩具などで商品化しやすいように」というスポンサーの意向など、さまざまな制約がつきます。その点、敵キャラは自由。正義の味方って真面目すぎるじゃないですか。ちょっと不真面目なほうが、デザインのしがいがありますよね。

 その意味でも、私がガンダムの中で一番好きなメカは、ジオン軍のザクです。メカは、監督の富野(由悠季(よしゆき))さんの要求に応じて描いていましたが、ザクの時は「モノアイ」「一つ目を守ってくれ」というだけ。つまり後は勝手にやっていいと。

 ただ、当時の私はガンダム以外にも「科学忍者隊ガッチャマンII」など、週に4本の作品を同時進行している状態。厳しいスケジュールの中、ガンダムと対峙するメカをガンダムより格好よく描くのは、私の意地でした。

 ヒントにしたのが、第2次世界大戦中のドイツ軍。ザクはパイプがむき出しですが、真面目に考えると、ああいうのが外に出ていると、敵に「ここを切ってください」と弱点を見せているようなもの。兵器としては致命的な欠点です。でも、パイプが見えることで、格好いいし、記憶にも残ります。1週間で描きあげ、第2稿であっさり決定稿になりました。

 シャア専用ザクは、頭に「ツノ」が付いています。時間がなくて、富野さんの「何か付けとけばいいんじゃない?」というアイデアから生まれました。当時のアニメの現場なんて、そんなものです。

 まさか、ガンダムが36年もつづくとは思ってもみませんでした。今、かつて小学生だった子どもたちが、40~50代で企業でも中核を担う年代になり、アニメとは関係のない仕事でもコラボすることが多くなりました。うれしいですし、人生は続いていると感じます。

AERA 2015年7月27日号より抜粋