経団連の指針により、2016年3月に大学を卒業する学生たちを採用するためのスケジュールが、大幅に後ろ倒しになる。これにより、「オワハラ」に怯える大手企業も出てきている。
例年は「大学3年の12月に企業が広報活動を開始→大学4年4月に面接開始→10月に内定式」だったのが、16年卒からは「大学3年の3月に広報開始→大学4年の8月に面接開始→10月内定式」となる。だが、「採用選考に関する指針」に縛られるのは、大手を中心に、約1300社ほどの経団連加盟企業のみ。非加盟企業には何の拘束力もない。中小企業などでは、すでに内定を出したところもある。
経団連加盟企業も、「指針」を守るとは限らない。労務行政研究所が昨年10月に人事労務担当者を対象に行った調査によると、すべてが加盟企業ではないにせよ、社員1千人以上の企業の4以上が広報開始、選考開始のいずれか一方もしくは両方で、「指針」を守らないと答えている。
15年卒までは、外資、ベンチャー→大手→中堅、中小の順に選考が始まったのに、16年卒からはその順番が逆転。中堅、中小が先に選考を終え、大手が続く形になる。しかも、16年卒は15年卒に続いて売り手市場。早く内定を出した企業は、例年にも増して「内定者拘束」とも呼ばれる「辞退防止活動」に精を出し、「指針」を守る大手企業の前に立ちはだかる。
大手はまだ接触すらしていないのに学生たちに就職活動を終えて自社に来るよう呼びかける行為は、職業選択の機会を失わせることになり、学生に対する「ハラスメント」だ、として、一部の採用関係者の間では「オワハラ(終われハラスメント)」という言葉が流布し始めているという。
とはいえ、拘束する側の企業も、選考のピークが分散する今年は、一体いつまで内定者のケアをすればいいのか、つかめずにいる。バブルのときのような物理的拘束では、内定辞退は防げない。マイナビの三上隆次編集長は言う。
「複数内定時に、先輩や同期の人柄で就職先を選ぶ学生は多い。内定者限定のSNSを用意したり、先輩社員に会わせたりして、入社したいという気持ちを高める戦略をとる企業が増えました」
※AERA 2015年3月16日号より抜粋