東日本大震災をきっかけに注目されるようになった地震保険。震災から4年がたつ今、正しく理解して、その必要性を改めて知っておきたい。
「病気やけがといった“ヒトのリスク”は社会保障がありますが、住宅・家財などの“モノのリスク”や、第三者への賠償はほとんど公助がありません」
こう話すのはファイナンシャルプランナー(FP)の清水香さん。地震や津波、噴火、火災などがそれだ。自然災害で家が全壊しても、国の公助は「被災者生活再建支援制度」の支援金最大300万円のみ。火災に至ってはほとんど公助がない。自力再建が基本だ。
東日本大震災では、新築したばかりの家が全壊した例がいくつもあった。被災しても住宅ローンは免除されない。ローンを抱えながら、新たな家の住居費も二重に負担せざるを得ないのだ。
「“地震はめったにないから保険に入らない”ではなく、めったにないけれど壊滅的なダメージを与えるリスクこそ、保険で備えておくべきです」(清水さん)
千葉県に住むパート勤務のミカさん(36)は、2008年に一戸建てを購入したが、地震保険に未加入だ。
「地震保険は保険料が高いし、耐震性の高い家だから大丈夫かなって。東日本大震災が起きて、地震保険に入ろうかと夫婦で話しましたが、結局そのまま」
清水さんによると、こうしたパターンは極めて危険だと言う。地震保険のカバー範囲は地震だけでなく、噴火や津波、地震による火災も含まれる。
阪神・淡路大震災で被災したある夫婦は、耐震性の高い家だったため倒壊は免れた。しかし、隣家からのもらい火で全焼。住宅ローンだけが残った。火災保険には入っていたが、地震による火災は対象外。地震保険でなくては、補償されないのだ。
同じ火災でも原因によって適用される保険が違う。意外と知られていない落とし穴だ。賃貸住宅なら住み替えができるが、持ち家はそうもいかない。
「持ち家で住宅ローンが残っており、貯蓄が少なく、身を寄せる先もない家庭はハイリスク」と清水さんは言う。
また、地震保険の保険料が高いというのも誤解だ。地震保険は国がつくった特別な保険で、保険料はどこの保険会社でも同じ。保険会社は利潤を得られない。
「1981年以降に建った都内のマンションの場合、地震保険金額1千万円あたりの保険料は年額1万8200円。木造住宅は2万9300円です。非常事態で受けられる補償に対して、保険料の負担感が大きいとは言えない」(清水さん)
※AERA 2015年3月9日号より抜粋