政府などによるネット上の自由の制限に抵抗してきたハッカー集団アノニマスが、「イスラム国」を攻撃している。「戦争」は、ネット空間にまで広がった。(ジャーナリスト・津山恵子)
「ウイルスのように扱ってやる。そして、われわれがその治療法だ。われわれは、インターネットを席巻しているんだ」
2月6日、アノニマスはインターネット上にアップした2分12秒の動画で、こう宣言した。真っ赤な画面に浮かび上がるのは、彼らのトレードマークの仮面。合成されたような声で語る。
「『イスラム国』を名乗る連中のウェブサイト、アカウント、メールアドレスを破壊してやる。お前たちには、オンラインで安全な場所はない」
●アカウントをアクセス不能に
「宣戦布告」は、米国をはじめ西側諸国が「イスラム国」に対する有効な対策を取っていないことへの反発とみられる。
アノニマスは英語で「無名」の意味。彼らのテロリストに対する攻撃は、今年1月にフランスで起きた風刺新聞シャルリー・エブド襲撃事件をきっかけに始まった。米メディアによると、アノニマスはすでに、「イスラム国」に関係しているとされる800ものツイッターアカウント、12のフェイスブックページ、50のメールアドレスを攻撃している。攻撃には、特定のアカウントに一度に大量のデータを送り、アクセスできなくする方法を用いたという。
日本人の後藤健二さんや湯川遥菜さんを含め、罪のない各国の市民の殺害を続ける「イスラム国」への攻撃は、多くの市民の賛同を得た。動画のサイトには、
「アノニマスは立派だ」
「そうだ! 民衆に力を!」
といった書き込みも見られた。
アノニマスは、さまざまな職業のハッカーが権力や不正に反発するとして団結、2010年ごろに活動を本格化させたとみられるが、参加人数は不明だ。