彼らの活動が広く知られるようになったのは、10年12月のことだ。機密情報をネットで公開する集団「ウィキリークス」が、米国の外交文書を大量に公表した際、アノニマスは、マスターカードなど米大企業がウィキリークスヘの支援を打ち切ったことを「不公正」だとして反発。これらの企業のウェブサイトを攻撃した。サイトはアクセス不能に陥り、大ニュースになった。
●サイバー戦争の新たな舞台
今回のアノニマスの攻撃は、ソーシャルメディアが中心。テロリストたちは、ソーシャルメディアを使って多くの若者を世界中からリクルートし、「イスラム国」には約100カ国から2万人超が流入したとされる。日本人人質事件では一連の殺害予告にもツイッターが使用された。「イスラム国」にとって、ソーシャルメディアを止められることは、世界へのアピールの手段を失うことにつながる。
ツイッターやフェイスブックなど大手ソーシャルメディアは、アノニマスが一方的に仕掛けた「戦争」とテロリストの活動を制御できるのか。
CNNによると、ツイッターの最高経営責任者(CEO)ディック・コストロは過去に、ツイッター上の炎上やいじめに関するツイートの削除について、内部メモでこう述べている。
「CEOとして、この問題に対し、当社の対応が貧弱で正直言って恥じている。ばかげている。何の申し開きもできない。この問題にもっと積極的になれないのは、私の責任だ」
これにCNNのサミュエル・バーク記者はこうコメントした。
「炎上やいじめが止められないなら、どうやってテロリストを止められるのか。ソーシャルメディアには、その力があるという確信が持てない」
企業や政府のウェブサイトを攻撃し、インターネットユーザーの自由を制限するアノニマスが100%「正義の味方」か、というと疑問が残る。誰が参加しているか分からないハッカー集団が、世界中の個人アカウントや情報を自由に閲覧し攻撃するなら、あなたのテロリストに関するツイートが攻撃対象になる可能性もある。彼らには、説明責任もない。
ネットには「警察」や「統治」はいらない。アノニマスという「警察」も、求めていない。
※AERA 2015年3月2日号