アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は日本生命保険の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■日本生命保険 新商品管理部 新商品契約管理グループ 課長 清宮敬子(51)
保険商品の銀行窓口販売が全面解禁されてから、間もなく7年になる。その新しい販売ルートの“裏方”を仕切るのが、清宮敬子の仕事だ。契約、支払い、コールセンターの業務すべてを新商品管理部が統括。滞りなく業務が進むよう、約200人の部員たちがいる3フロアを日々、見て回る。
預金を扱う銀行の窓口で、保険商品を売るのだから、十分な説明が求められる。商品の性質や約款について幅広い知識を持つことはもちろんだが、マニュアル通りでは答えられないことも多い。耳の遠いお年寄りも少なくなく、コールセンターには何度も粘り強く説明する大きな声が響く。困ったことが起きれば、清宮がすばやく的確に判断する。
部員の約9割は女性。雇用のかたちは、パートや契約などさまざまだ。子育てなどの事情で、あえて昇進を望まない女性も多いが、そんな人たちに清宮はこう語りかける。
「自分自身の『革新』を意識して前進してほしい。可能性にチャレンジしてほしい」
昭和学院短期大学被服科を卒業後、1983年に一般職(現・業務職)として入社、地元の千葉支社に勤務した。10年以上、社内事務に携わってきたが、ある時、営業部で働く機会を得た。目標達成に向けてリーダーシップを発揮する営業部長の姿に刺激を受け、33歳で総合職転換試験を受けた。初挑戦は不合格。ただ、あきらめる清宮ではない。新たな職務にチャレンジする社内派遣制度に手を挙げ、東京へ転勤。39歳で試験に再トライし、総合職になった。「チャンスだ。行ってこい!」という上司に背中を押され、7年間の大阪暮らしも経験した。
「子育てや介護など、それぞれ事情はあると思いますが、上位職へ挑戦するよう促しています。今年は積極的な反応が返ってきてうれしいですね」
女性の歩む先を照らす頼もしい存在だ。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2014年11月10日号