イナゴの佃煮なら、あなたも食べたことあるでしょ?気持ち悪いって?でも、昆虫食はアジアの伝統。30年後は、虫を食べないと生き残れないかもしれません。
育った街は東京・青山。小学校の夏休みにカブトムシを捕った経験すらないという。
「だから私にとって虫は、完全に食べ物でしかないですね」
そう話すのは、昆虫食ポータルサイト「むしくい」を運営するムシモアゼルギリコさん(40)だ。これまで食べてきた虫たちがこの人の血となり肉となっているのだろうか、と思わずじっと見つめてしまう。身体中のどこにも、それらしさはない。あたりまえか。
彼女が虫食いに目覚めたのは6年前。漫画に出てくる料理を再現する「漫画飯」がはやっていた。読んでいた漫画のなかに虫を食べるシーンがあって、「漫画飯のノリで虫を食べたい」と『昆虫食入門』(平凡社新書)などの著書がある内山昭一さん主宰の昆虫料理研究会に参加した。すると意外においしくて、見た目と味のギャップにすっかりハマってしまったのだという。
2013年5月に国連食糧農業機関(FAO)が発表した報告書によると、50年までに世界の人口は90億人に達し、現在の2倍の食料が必要となる。報告書は、良質なたんぱく源で栄養価が高いこと、採集が容易で家畜より飼育しやすく安価であることに触れ、昆虫の食料、飼料としての可能性を示した。
それまで「ゲテモノ」扱いだった昆虫食が、世界的に、まじめに語られ始めた。
トークショーを聞きながらさまざまな虫料理が食べられる「東京虫食いフェスティバル」なるイベントも開かれている。14年11月の第5回(!)をのぞくと、大学のゼミ仲間だという男女3人が、虫のミックスフライやタガメ酒を注文していた。
※AERA 2015年1月19日号より抜粋