かつては「扱いづらい」とも言われた海外経験者。少数者として生きたタフさが今、企業に重宝される。
欧州系金融機関の東京支社でシステム系の管理職の立場にある女性Bさん(42)は、19 年に及ぶ米国生活で、マイノリティーとしての環境に鍛えられた。
留学先の大学を卒業して2年後、大手IT企業のコールセンの部下を持った。アジア系で女性という、米国でも不利な状況で認めてもらうため、スピード感を重視。上司にはタイムリーに報告し、リスクを自分でとれるかとれないかの判断を常に心がけた。
その経験が今生きている。15人いるチームのメンバーは8割が外国人で、世界各国の社員と電話会議をすることも多い。
Bさんは、スケジュールや予算、何をするか、できなかったときにどうするか、具体的なプロセスをその場で「依頼」するかたちで、進んで場を仕切る。
「根回しや段取りをしている時間はない。間髪を入れずに意見を言うことが大事です」
グローバルな競争に挑まざるを得ないビジネス環境の中、留学生や海外経験者の採用に積極的な企業が増えている。
国際協力機構(JICA)によると、青年海外協力隊を経験した帰国者への求人がここ数年で急増しているという。青年海外協力隊事務局参加促進・進路支援課の松舘文子さんはこう話す。
「現地での苦労から得られた問題解決能力や柔軟な発想、どこに行っても仕事を見つけてこられる突破力に、企業の注目が集まっているようです」
※AERA 2015年1月19日号より抜粋