誰も気づかない林の陰にひっそりと立っているきのこ。よく見るとかわいい模様にハマる女子が増えている。
それは、運命の出会いだった。舞台は東京・八王子の大学キャンパス。林の草木の陰にひっそりと立っていたそのお相手の名は、ウラムラサキシメジ。きのこだ。傘の表面は普通の茶色だが、裏側のヒダはおしゃれな薄紫色をしている。いま流行のバイカラー。なんてかわいいんだろう!すっかりきのこの魅力に取りつかれた。あいきょさん(23)はそれ以来、週に1回はきのこを探して外を歩く。
「忙しくてきのこと触れ合う時間が足りなくなると、いても立ってもいられなくなるんです。真夜中に懐中電灯を持って公園に向かったこともあります」
料理人見習いをしているあいきょさんの「きの活」は幅広い。カメラを持って歩き回り写真を撮るだけでなく、きのこ同好会に所属して採取したり、きのこ料理を考えたり。きのこモチーフのピアスやペンダントなどの雑貨を製作し、全国のきのこイベントに出向いて販売もする。
イラストレーターのコイケハルカさん(24)も「きのこ女子」の一人だ。きのこ歴は10年以上。好きなきのこは「ササクレヒトヨタケ」。名前の通り、一夜で傘が液化してなくなってしまう、その短い命、はかなさに魅力を感じるのだという。
コイケさんによれば、2011年頃からきのこブームが始まったという。元祖きのこ女子・とよ田キノ子さんの活動や、スマホのゲームアプリ「なめこ栽培キット」シリーズのヒット、きのこ検定の開始など、一気にブームが花開いた。
「赤い傘に白い水玉模様というベニテングタケの毒々しさが好き」「毒性の強さからDestroying Angel の異名を持つドクツルタケの、真っ白で清楚な姿にひかれる」
取材中、そんな声を聞いた。目鼻をつけてデフォルメしたキャラクターとしてのきのこよりも、リアルなきのこ、忠実に再現されたきのこに、より愛情を注いでいるのが印象的だ。
きのこを楽しむときに注意したいのが、素人鑑定での採取。食用と毒きのこでよく似ているものがあるため、確実に鑑定できる人がいない場合は、野生のきのこを採って食べるのはやめておきたい。
※AERA 2014年12月29日―2015年1月5日合併号より抜粋