NHK杯は「けがで練習できていない」と負ける理由を作りやすかった、と羽生は言う。「それで、こんな結果になった。すごく反省しています」 (c)朝日新聞社 @@写禁
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NHK杯は「けがで練習できていない」と負ける理由を作りやすかった、と羽生は言う。「それで、こんな結果になった。すごく反省しています」 (c)朝日新聞社 @@写禁

 衝突事故にあった中国杯で2位。NHK杯でも4位。12月11日からのグランプリファイナルには出場6選手中、最下位で滑り込んだ。羽生結弦(はにゅうゆづる)は本当のところ、どんな状態にあるのだろうか。さまざまな臆測も飛び交うが、羽生本人が大阪でのNHK杯後に応じた記者会見や囲み取材、コーチのブライアン・オーサーへの個別取材から、羽生の「いま」の分析を試みた。

 羽生本人の説明はこうだ。

「大阪入りした1、2日目(11 月26、27日)の練習では、左太ももに少し違和感があるくらい。自分とコーチと医師とで相談し、『滑れる』と判断しました。試合の時は、本当にいつも通りの状態でほとんど回復していて、ジャンプもいい感覚に戻ってきていた。試合では興奮物質も出るので痛みも感じないし、集中していました」

 オーサーも、こう話す。

「最も心配したのは足のけがでしたが、結弦は痛みもほぼなくなっていると話していたし、実際の動きもよかった。試合に出てけがが悪化したり、再発するような状態ではなかった」

 ではなぜ、NHK杯ではジャンプのミスが相次いだのか。フリー当日の公式練習でも試合直前の6分間練習でも、4回転を2種類とも成功させていたのに。

本人が言う原因は「焦り」だ。

「練習で跳べているからこそ、成功させようと焦って(気持ちが)跳びに行き過ぎました」

 衝突直後の中国杯より悪かったことについても説明した。

「中国杯では、本当に(足が)痛かった。それでも全部(4回転を)回っているんです。NHK杯でできなかったのは、自分の弱さ、精神的なものです」

 一方のオーサーは、練習不足を一番の原因に挙げた。

「結弦は中国杯のあと、10日くらい氷に乗らずに休みました。練習を再開したときは、『4回転の調子が悪く、回転不足になったり、身体が重く感じる』と言っていた。大阪入りしてからは4回転を降りていましたが、単発では跳べても、曲の中で跳ぶのは別ものです。ちゃんと曲をかけた練習は本番の朝が初めて。成功するはずがありません。結弦は奇跡を期待して、4回転2本くらい降りてやるという気持ちだったようですが、そう簡単にはいかないものです」

 NHK杯からグランプリファイナルまでの10日間は、オーサーが用意した細かな計画に基づいて「自主練習」する。

 羽生は言う。

「10日あれば準備できる自信はあります」

AERA 2014年12月15日号より抜粋