整然とした机より、散らかった机のほうが仕事ができる。そんな感覚の人はいないだろうか?雑多さこそイノベーションを生むと主張するカオス派の声を紹介する。

 小学生に大人気の「ゴースト暗算」メソッドを開発した岩波邦明さん(27)は、カオス派のひとり。

カオスの効果に気づいたのは高校3年のときだ。東京大学を志望していたが、模擬試験でE判定が出て、このままではいけないと勉強法を一から見直した。集中力が発揮できるベストな環境を作りたいと試行錯誤するなかで、きちっと整理した机、少し乱雑な机、両方で一定期間試してみると、乱雑なほうが快適に感じ、集中できることに気づいた。

 乱雑な机で受験勉強に励み、東大理IIIに無事合格。家庭教師をするようになってからも、たくさんの子どもの机を見てきた。

 ある教え子の家では、勉強後に毎回、母親が参考書は本棚に戻し、机をきれいさっぱり片づけてしまっていた。子ども自身も毎回リセットされてしまい、それが勉強の妨げになっているような気がして、片づけないようにアドバイスしたところ、成績がアップしたという。

「ログ(記録)を残しておくというイメージなんです。よく使う参考書などが近くにあり、使いやすくカスタムされていく。自分だけの庭ができていく感じです。盆栽に近いかもしれません」

 岩波さんは今も、アイデアを考える環境はなるべくカオスにしているという。仕事のアイデアはPC上のひとつのフォルダーにまとめる。たった1行のメモから、ワード数枚になる企画書、手書きのイメージをスキャンした画像まで、形式も雑多に放り込む。そうすることで、どこかで点と点がつながることを期待する。

AERA  2014年11月24日号より抜粋