少子化を迎えた今、大学は生き残りをかけて様々な対策を練っている。そのひとつが、学生に寄り添った「育成型」の入試だ。

 その女性は物柔らかな口調で尋ねた。

「あなたのやりたいことは、この大学で本当にかなえられる?」

 岩間汐里さん(21)が高校3年のときのことだ。幼稚園教諭になりたい夢を語る岩間さんに、その人は時間をかけて、そのための道筋を示してくれた。

「八つの大学のオープンキャンパスを訪ねたけど、ここまで親身になってくれたのは、その大学だけでした」

 勧誘の言葉しかかけない他校と違い、自校の欠点まで挙げてアドバイスしてくれたことが心に残った。その大学、愛知東邦大学の3年になった岩間さんは今もその時の担当職員とよく話す。資格を取れば真っ先に報告する、メンターのような存在だ。

 実は、これは同大が2011年度から始めた「育成型AO入試」の一環だ。出願の前に、最低1回の面談を受けることを出願の条件にしている。面談は教員ではなく、研修を受けた職員が担当し、受験生の相談に乗りながら、なぜこの大学に入りたいのかをしっかり考えさせる。面談を経て、書類審査、面接と段階が進んでいくが、不合格になった場合ももう一度担当職員に相談し、改善点を話し合ったうえで再チャレンジでき、入学後も職員が継続的に目をかける。

 08年に定員割れに直面した同大は、中退率も3割を超えるなどの状況があり、入学後のミスマッチを防ぐ策としてこの育成型AO入試を始めた。システム導入後、学内の雰囲気はずいぶん変わったという。
 
 13年度からは一般入試にも面談を取り入れようと、「持参割」を開始。願書を郵送でなく持参して個別面談を受けると、受験料が半額になる。

「中には滑り止めで受ける高校生もいます。第1志望でなかったとしても、うちの大学のことを知って入ってもらいたい」(入試広報課の奥田緑さん)

AERA 2014年11月3日号より抜粋