イクメンが増えた今、「育児の経験が仕事の役にも立った」と結果として実感している男性は少なくないはずだ。だが「仕事に役立つのだから育児をしよう」と誘導する手法となると、受け止め方はさまざまだ。
アエラ9月1日号の特集「男がつらい!」に掲載した男性5人の座談会では「男性が家事や育児をするためにインセンティブは効果的か」という議論にもなった。インセンティブとは、英語で「動機付け」「報奨」「刺激」などを意味する。家事や育児をまったくしない「ゼロメン」をイクメンに変えるために「役立つ」「メリットがある」と奨励する方法について、どう考えればいいのか。
「父親は楽しい!」と発信してイクメンブームの火付け役になったNPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん(51)は、
「家事や育児のメリットを伝えないと男性は動かない。動かない人を動かし、多数派にして社会に定着させるには、少子化対策などの名目の『大きな物語』が必要。だが家庭内でインセンティブを求めたら、女が家事をするのは当然なのに、なぜ男だけが評価されるのか、となる」
と語った。男性学を研究する武蔵大学助教の田中俊之さん(39)は、
「短期的には、エサをまいて多くの人に家事や育児に関わってもらわなければならない。育休を取ると昇進できるといったアプローチも有効」
と「仕事に役立つ」というインセンティブを提案した。
この議論をめぐっては読者の意見も分かれた。育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささん(40)はブログにこのように書いた。
「仕事に帰結する功利的な動機付けを持ち出すのは危険。仕事の成果を最終目標としてしまうと『仕事>家庭』という潜在意識から抜け出せない」
会社員の男性(35)も同様の理由で違和感を覚えたという。
「経済活動至上主義の考え方のままでは、男性は会社から家庭に戻っていかないでしょう」
アエラが「男性の家事・育児にインセンティブは必要か」とアンケートをすると、必要38%、不要62%だった。目立ったのは、共働き妻からの「断固不要」という声。「妻が家事をするのは当たり前で、インセンティブは一切ない。男にだけあるのはおかしい」(40代/女性/共働き)などの意見が多かった。
※AERA 2014年9月29日号より抜粋
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