感情の厳密な定義はむずかしい。広い意味では、自分を含めあらゆる対象について、良い・悪い、危険・安全などを「評価」した時に人に生じる状態をいう(撮影/写真部・外山俊樹)
感情の厳密な定義はむずかしい。広い意味では、自分を含めあらゆる対象について、良い・悪い、危険・安全などを「評価」した時に人に生じる状態をいう(撮影/写真部・外山俊樹)
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 人間なら誰しも抱く、嫉妬の感情。この嫉妬の脳活動について、京都大学の高橋英彦准教授(精神医学)らが調査したところ、興味深いことがわかってきた。

 実験で恋人がいる学生に、「彼女は昔の彼の部屋で一晩過ごしました」といった性的な不貞を示す文章や、「彼女は、ぼくの誕生日に他の男と食事した」といった精神的な不貞を思わせる文章を提示、場面を思い浮かべてもらった。

 脳活動を調べると、男性は、脳の中で感情にかかわる部分である「扁桃体」のほか、嫌悪感にかかわるとされる場所や、性ホルモンの分泌にかかわる場所の活動が強まった。女性は、動作やしぐさから相手の意図を推定するような場所の活動が高まった。女性の嫉妬のほうが複雑な感情なのかと考えさせられる結果だった。

 米国の研究グループは、男性は性的な不貞に強い嫉妬と苦痛を感じ、女性は精神的な不貞により嫉妬を感じる傾向があるという報告をした。高橋さんらの研究では、男女ともに性的な不貞のほうがイヤだと答え、米グループとは違う結果になり、そう単純でもなさそうだ。

 しかし、米グループの結果は、感情も生物進化の産物とみる考え方に合う結果だったので注目を集めた。たくさん子孫を残す確率が高い性質は進化の過程で残り、逆は淘汰される。

 妊娠・出産をする女性は自分の子だと確信しているが、父親にはその確証がない。自分の血縁でない子の世話をして、自分がもっている資源を投資すれば、財産や労力、自分の子を増やす機会をむだにすることになるうえ、ライバルの子の成長を助けることにもなる。そんなことを避けたい男性は、配偶者の性的な不貞に強く反応する。そばにいて子どもの生活を守ることを配偶者に期待する女性は、精神的な不貞に反応するという見方がある。

AERA 2014年5月19日号より抜粋