就活に成績は無関係? そんな「常識」が崩れそうだ。現大学3年生の採用から、一部の企業が、学生に成績表を提出させるようになる。
日本の就職活動では、学生に成績表の提出を求めるのは内定を出した後か、最終面接の前という企業が多かった。NPO法人DSS(東京都千代田区)の辻太一朗代表は、採用活動に成績を活用することで、学生が学業に打ち込むことが報われる社会にするよう訴えてきた。
それに呼応して、辻氏が社長を務める大学成績センターが提供する「大学成績データサービス」を今年から多くの企業が利用するようになる。学生が登録した成績を企業が閲覧できるシステムで、三菱商事、帝人、リクルートキャリア、日本たばこ産業、富士通、古河電気工業、プルデンシャル生命保険、清水建設、神戸製鋼所、大塚製薬、東急エージェンシー、リクルートマーケティングパートナーズ、セブン- イレブン・ジャパン、ベルシステム24、SGホールディングス、三井化学、東レ、KADOKAWA、凸版印刷など約30社が導入を予定している。このことが報道されると、学生の間には波紋が広がった。ツイッターでは、「不安」の声も。
三菱商事人事部採用チームリーダーの日下部義志氏によると、成績活用に関する学生の関心は高く、同社のセミナーでも「成績はどのように活用されるのか」などの質問が出るという。
「大学時代にどういう科目を履修して、何に力を入れたのかなどを面接で聞き、学生を多角的な視点で見たいというのが導入意図だということをきちんと説明しています」(日下部氏)
授業への取り組み方もきちんと評価しようという企業が出てきたのはなぜなのか。帝人の人財開発・総務部長、藤本治己氏は言う。
「組織に属すると、特に最初のうちは、やりたい仕事ばかり任されるわけではありません。これまでは、学生がやりたくてやってきたことについて書類や面接で聞いてきました。今後成績表もあわせて活用することで、やりたくないけれどもやるべきことにどう対応する人なのかを知りたいと思います」
※AERA 2014年1月20日号より抜粋