英語の論文を読むだけでかなりの負荷があるため、最初のうちは鋭い質問に戸惑う学生も多い。しかし、ゼミで教授とのやりとりを繰り返すうちに、学生たちは質問されそうなことを先回りして準備できるようになるという。ゼミの後期からは論文執筆。藤原教授いわく「論文執筆で、社会に出てから役立つ力をつけることができる」。

 大学での学業が企業に評価される社会を目指して活動しているNPO法人DSSの東大生に対する調査では、藤原ゼミは例年3倍以上の倍率がある「就職時や社会に出てから役立つ力がつく人気ゼミ」だ。学生からは、「教授が人気」「熱意のある学生が多い」などの評価を受けている。藤原教授は言う。

「ゼミの目的は、自分の頭で考える学生の養成です。疑問が生じたら客観的な事実によってどう立証するかを考えるトレーニングを積んでもらいます」

 こうしたゼミの背景には危機感がある。最近では、東大生は単なる受験エリートで社会に出てから使い物にならないなどと揶揄される向きもある。

「入試にパスする力は反射能力です。それも重要ですが、加えて自ら問題設定をしてそれに答える思考力と、先が見えない研究を続ける持久力を論文執筆を通じて会得してもらいます。この三つの力は、官庁、企業、研究、どの分野に進んでも必ず役立ちます」(藤原教授)

AERA 2013年12月30日-2014年1月6日号より抜粋

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