仕事で多くの人が経験するであろうプレゼンテーション。欧米ではショーアップされたプレゼンが注目されるが、そうした派手さはなくとも「伝わるプレゼン」をすることは可能だ。
苦境を「プレゼン力」で打開したのは、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授だ。人間に感染すると致死率の高い高病原性鳥インフルエンザウイルスを研究してきた。だが、11年12月、生物テロへの悪用の危険があるとして、米政府のバイオセキュリティーに関する委員会から、科学誌での論文発表に待ったをかけられ、論文の一部削除を求められた。
12年4月、ロンドンでの学会には、論文発表に否定的な人たちも多数参加した。異様な空気のなか、河岡教授は、
「いつもと何も変えず、淡々と話した」
プレゼンの結果、慎重派の人々にも、研究の意義を少しは理解してもらえたと感じている。そんな努力もあってか、米政府は判断を見直し、同年5月に論文の全文が科学誌に公開された。
医学界ではショーのようなプレゼンは禁物だが、河岡教授は、米国へ留学中にプレゼンの訓練を受けた経験から、「伝えるには、たくさんの工夫が必要」と考えている。その中から三つの秘訣を教えてもらった。
〈その1〉スクリーンに映す文字の大きさは32ポイント以上。それより小さくすると、人はたくさんのことを言いたがる。
〈その2〉資料の解説は1枚1分未満で。いまの時代、人の集中力はそれ以上もたない。
〈その3〉そのプレゼンは、お母さんにも伝わるか。母親に伝わらないプレゼンには、まだ練る余地がある。
「なるほど」と感じる工夫だが、もちろん「自分は間違ったことはしていない」という信念があってのことだ。
※AERA 2013年11月25日号より抜粋