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 約4割の夫婦がその範疇にあるという、セックスレス。そこには男女のセックス観の違いなどが影響しているようだ。

 男女のセックス観の不一致をさかのぼると、思春期の性教育に行き着く。女子栄養大学栄養学部教授の橋本紀子氏は、「ある10年間をのぞいて、日本の性教育はセックスレスになってもおかしくない内容です」と語る。

 その10年は、日本の“性教育元年”と呼ばれる1992年から始まった。80年代後半に起きたエイズパニックの影響で学習指導要領が改訂され、小学校でも性教育の授業が行われるようになった。5年生の理科でヒトの発生を扱うようになり、新たにできた「保健」の教科書には、思春期の体の発達を示すイラストが全裸で描かれていた。

「それまでは、性=汚らわしいもの、というネガティブなイメージの性教育が多かった。中学・高校では、望まない妊娠による中絶の生々しい資料を見せたり、水子供養の話を教えたり」

 ところが、一部から批判が強まり、教科書の内容が変わっていった。

「全裸だったイラストは着衣になり、生命の発生を教えるページでは、ヒトではなく、なぜかウニをモデルにしています」

 外国の性教育を見てみよう。

「フィンランドでは、中学生にも性行動があるという前提で『健康』の教科書が作られています。セックスやマスターベーションがどういうものか。避妊にはどんな種類があるか紹介されています。また、中学生向けに『人間生物学』の教科書が1冊独立してあり、人間の遺伝と繁殖や、性交、出産、避妊等についても教えています」

 また、フィンランドでは、市立の「青少年センター」やNGOなどによる「女の子の家」で、デートやセックス、避妊について相談できる。社会として、豊かな性を育む土壌がある。

「セックスの意味やリスクを知っているからこそ、ちゃんと選択できます。日本人はそれらを学ぶ機会がないまま、ネットなどのグロテスクなポルノに触れるのですから、性に対する豊かな興味もそがれるはずです」

AERA 2013年8月26日号