
若者は3年で会社をやめ、「石の上にも…」が死語になりつつある昨今。3年どころか10年、15年と座り続け、見事に花を咲かせる芸人たちがいる。今年行われた「キングオブコント」で優勝した芸歴16年目の「バイきんぐ」もそうだ。
なぜ遅咲きになったのか、ネタ作りとツッコミを担当する小峠英二は語る。
「早く売れるに越したことはなかったんですが、自分たちに合うネタがなかなか見つからなかったということなんです」
昔はボケとツッコミが逆で、マンガチックで奇抜なネタをやっていた。だが4年前から担当マネジャーのアイデアで、2カ月に1回、新ネタ6本をおろすライブを今年まで続けた。
「特に東京では、芸人がブレークするきっかけになるのはネタです。トークとかを磨く暇があったらネタの実力を上げてほしかった」(担当マネジャー)
新ネタをたくさん作る中で、ボケとツッコミの入れ替えを試したところ、劇場の反応が良かった。奇抜なネタから「少しずれた人間」が出てくる演劇色の強いネタに切り替え、「いかにもボケらしい言葉は使わないようにした」(小峠)ところ、評価が高まっていった。「キングオブコント」で高評価を得た、自動車教習所の卒業生が教習所を懐かしみにくるコントは、まさに「新生バイきんぐ」の真骨頂ともいえるネタだった。
ボケ担当の西村瑞樹は先輩芸人に「やめへんのも才能や」と言われたことがある。
「結婚を機にやめたやつもいる。運良く続けてこられたからこそ、今があるんだと思います」
お笑い評論家のラリー遠田さんに、「続ける才能」を発揮し続けている「遅咲き候補」2組を挙げてもらった。オジンオズボーン(松竹芸能)はかつてアイドル人気を誇っていたが、最近ボケの篠宮暁が大きくキャラクターを変えて今年の「THE MANZAI」決勝進出はすでにほぼ確定。「スパローズ」(浅井企画)は「18年やっても売れない」という自虐ネタで、ライブではひっぱりだこだという。
※AERA 2012年12月3日号