「当時はまだ親が家で子どもを育てるのが当たり前という人もいて、『保育園なんて子どもを放っておいて働く勝手な親たちの迷惑施設』などという衝撃的な意見もありましたね」
と理事長の山田静子さん。
「子どもの姿を見たくない」という声を受けて民家と隣り合う壁には窓を作らず、出入りする車の台数を常にチェックされていることから、当時まだ珍しかった保護者専用の駐車場を設け、「乳児の泣き声がうるさい」と言われれば植栽をするなど、さまざまな工夫を重ねた。
言い訳は絶対しない。その代わり、山田さん自ら町内会や反対住民と積極的にかかわり、餅つき大会や交流会を開いては、園で用意した食事を配って歩いた。保護者には、送迎時には交通ルールを守ることを徹底して求めた。数年たって反対運動にかかわる住民にこう言われた。
「本当は子どもたちの声なんて、そんなに聞こえないのよ」
※AERA 2012年11月26日号