※写真はイメージです (Getty Images)
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 熟年離婚という言葉も定着したが、最近は妻が突然いなくなり離婚するケースが増加している。残された夫は戸惑うばかりだが、なぜふらっと「家出離婚」が増えているのか。その理由を探った。

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 厚生労働省の「平成30年我が国の人口動態 夫・妻の年齢階級別にみた離婚件数構成割合の年次推移-昭和25~平成28年-」によると、ここ10年間で60代以上の離婚の割合が上昇していることがわかる。近年、増えている60代以上のふらっと家出離婚から見えるのは、男女のすれ違いだけではなく、家族に対する“期待感”が離婚を加速させていると澁川良幸氏は分析する。澁川氏は1992年に「離婚110番」を開設以来、延べ3万9千人の相談を受け、また夫婦問題のカウンセラーとして多くのメディアでも取り上げられてきた。

「家族はずっと一緒という前提があるため、『もっと話を聞いてくれてもいいのでは』という期待が生じます。でもそれがかなわなくなると、憎しみや怒りがたまり、長期化すると怨念に変わっていきやすい。世間から見たら、60歳以上の高齢になってから離婚するのはどうかという見解がありますが、本人にとっては『やっと別れる時期がきた』ということなのです」

 60代以上の離婚の原因の一つが、「同じ墓に入りたくない」であることも、見逃せない。

 また、熟年世代にとって金銭が絡むトラブルが離婚の引き金になることも少なくない。

 米原和博さん(63歳・仮名)は、ある日クレジット会社から「引き落としができない」という連絡を受けた。そこで銀行口座の残高を調べてみると、残高がゼロになっていた。驚いた米原さんは、妻(61歳)に尋ねた。「一体どうなっているんだ」

 米原さんは定年退職後も、再雇用で働いている。預貯金の管理をしている専業主婦の妻は問い詰められると、「複数のネットワークビジネスに加入し、その商品の購入に使ってしまった」と白状した。しかもその金額が、2千万円以上に及んでいるという。米原さんは以前から、独立して出ていった息子の部屋に、段ボールがめいっぱい入っていることに気づいていたが、妻に尋ねることはなかった。

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