安倍首相(右)と加藤厚労相 (c)朝日新聞社
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 安倍晋三首相が独断で投じた“劇薬”によって、列島はパニックに陥った。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国すべての小中高校と特別支援学校に対し、春休みまで臨時休校するよう要請。休業補償など新たな施策を打ち出したが、官邸内では深刻な亀裂が生じている。

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 安倍首相は2月29日の記者会見で、この時期に休校を要請することを「断腸の思い」と述べたが、内実は少し違う。自民党幹部がこう話す。

「安倍さんの会見、この程度かと期待外れだった。北海道の鈴木直道知事が2月26日に道内の全小中学校の臨時休校を要請し、評判がいいという話が官邸内で話題になり、その施策をもらおうと今井尚哉首相補佐官が安倍首相に進言。細かいところを詰めず、表明したというのが真相だ。側近の萩生田光一文科相、鈴木知事の親分である菅義偉官房長官、杉田和博官房副長官も制止しようとしたが、安倍さんはそれを振り切った。あまりにも唐突な決断で公明党にも話を通しておらず、大混乱になった。この亀裂は今後、響くだろう」

 政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーからも疑問の声が聞かれる。委員の一人で、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦医師はこう語る。

「休校は諮問されたテーマにはなかったし、私たちが提言したものでもありません。どの仕事でもそうでしょうが、医療従事者でも看護師や薬剤師、検査技師には子どもを預けて共働きしている人が結構多い。この人たちが仕事を休まざるを得なくなれば、医療体制はガタ落ちになります。もちろん休校も感染症対策の一環ですが、今回、多くの社会的なマイナス要素を無視して行うほどの効果があるとは思えません」

 28日に衆院を通過した2020年度の予算案に、野党側が求めていた新型コロナ対策予算を盛り込むことを拒否。批判されると、冒頭の首相会見で慌てて今年度予算の予備費2700億円の活用と、新たな助成金制度の創設に言及した。

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