インフルエンザウイルスの電子顕微鏡写真(円内) (c)朝日新聞社
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抗インフルエンザウイルス剤の種類や特徴 (週刊朝日2020年3月6日号より)
抗インフルエンザウイルス剤の種類や特徴 (週刊朝日2020年3月6日号より)

 新型コロナウイルスによって感染症への不安が高まっている。実は、いまも流行しているインフルエンザは毎年約1万人が亡くなる。治療法として抗ウイルス剤が出されることが多いが、注意が必要だ。副作用のリスクがあり、乱用すれば耐性ウイルスの危険も。突然死や異常行動の懸念も指摘されている。問題点を正しく理解しておこう。

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 新型コロナウイルスによる肺炎でもわかるように、ウイルスによる病気は確かに怖い。米国ではインフルエンザが流行していて患者は約2600万人、死者は約1万4千人に上る。日本でもインフルエンザによる死者は毎年出ているのだ。

 病気の原因が細菌ではないので抗生物質(抗生剤)は効かない。インフルエンザに有効な抗ウイルス剤も開発されているが、体内での増殖を抑えるもの。ウイルスそのものを殺すような作用はない。感染初期に飲まないと効果が薄かったり、副作用のリスクがあったりする。

 主な副作用としては下痢や嘔吐(おうと)、腹痛などがある。ほかにも重大な副作用の一つとして、頻度は不明だが「精神・神経症状、異常行動」などの恐れがある。

 抗インフルエンザウイルス剤を飲んだ人が異常行動を起こして事故死したり、睡眠中に呼吸が止まって突然死したりするケースも報告されている。昨年12月にも、広島市で中学生の男子が飲んだ後に、自宅マンションから転落死した。

 異常行動による事故死や突然死について、厚生労働省や製薬会社側は、因果関係ははっきりしていないとの立場だ。広島の事故を受けて、市民団体の「薬害タミフル脳症被害者の会」は、因果関係を認めるよう厚労省に要望書を出した。

 異常行動後の事故死は以前から問題になっていた。2007年2月に中学生が自宅マンションから転落死する事故が2件続き、厚労省は翌3月からタミフルの10代への処方を原則禁じた。

 その後、厚労省はインフルエンザにかかったときは服用の有無や、薬の種類に関わらず異常行動を起こす可能性があると判断。18年8月に10代への原則禁止を解除するよう指示した。

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